「あなたには適性があります。よってこの学園の則に従い、あなたの入学を認めます」

「大いなる乙女像は夜中になると動いて人を襲う。この怪異には『歪んだ花嫁』という名前がついているの」

皮膚を食い破って、体内からクレマチスの蔓が伸びる。少女たちの血を纏い、蛇のようにのたうちながら、ぎくしゃくと中空を泳ぐ──

「もうじき目覚めの時がきて、すべてなかったことになる。……何ひとつ、憶えていなくていい」──遠くで時計塔の鐘が鳴っている。

身体の奥に熾ったいかがわしい火は、苦い後悔を打ち消すように、マコーの中でいつまでも燻りつづけた。

『さようなら、パヴォーネ。どうか元気で……。だいすきだった』

礼讃祈堂の地下に地獄への門が開かれている──ロビンがボタンを押すと、静かな駆動音と共に床の一部がゆっくりと下がっていった。

この智見種は、壊れているのかもしれない──しかし見終わった後、パヴォーネの不調はすっかり回復していた。

『あたしらしく、単刀直入にいくよ。……愛してるよ、歌い鳥』

「少しは気持ちがわかるかと思って。でも無駄だったわね。私に人は愛せない」

『それじゃあ、さようなら』 『またね。……頼んだよ』

「神に自らの模造品を造るよう命じた。でも生まれたのは、無秩序に異造化を繰り返す化け物だったわ。それがネヴァーメイデン」

『寂しかった……ずっと……探してたよ……』『……マ……コー……』

「夢じゃ……なかったのね」

「……きっとマコーは、何かをやり遂げたのよ。傍目には、どう見えていたとしても」

（マコーのことを忘れてしまったの……？） 血の気が引いてふらつくアルエットを、パヴォーネは優しくいたわった。

「愚かね。最後まで認められなかったの」

「本物を殺した気分はどう？　悪夢をとうとう現実にした手ごたえは？」

窓の外では、相変わらず激しい風が吹き荒れていた。 狂気を訴えるかのように。 終わらない地獄の底から、悲鳴を迸らせるかのように。

「アルエット。あなたを愛している」 「ええ、私も……あなたのことが大好きよ」

「……アルエット。私は、あなたを取り戻した。今度は、あなたに私を与えたい」 「……ありがとう、アヴェルラ」

今、ふたり分の鼓動の共鳴が訴えるものは、ただ純粋な喜びだった。 出会えたこと、これからも共に歩いていけることを祝福し、高らかに希望の歌を奏でている── 私には、そのように聞こえたのだった。

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